餌らしい物が流れてくれば、コイは何のためらいもなくこれを口にし、食べられるかどうかは口の中で調べる。フライは、コイにとって食べられないものだから、口に入っても必ず吐き出される。しかし、口の中には入ればこっちのもので、フライが口の中にある間に合わせれば釣れるのだ。問題は、いかにコイに口を使わせるかだ。自然の餌が流れるのと同じに自然に流してやればいい。あくまで自然に[流す]。コイは空から落ちてくる餌や水面を逃げ回る餌を待っているのではないので、コイの鼻先に直接キャスティングしないで鼻先を通る様に[流す]。
水の流れていない池で釣るのなら流れを気にしなくても良いが、河川の場合、どんなに流れていないように見えても必ず流れがあるし、風が加わることもある。その流れと風を読み、流れに載せ自然に流す。渓流などの場合、水の流れが複雑で、よほどの溜まりでないと長い距離は流せないが、コイ釣りの場合、コイの居る場所は渓流に比べ流れの緩い場所なので、風さえ無ければ魚がフライにアタックするまで流して待つことも可能です。流れがどこでよれているか、どこが速くどこが遅いか、風でどちらの流されるか、どこを流せばフライが目標のポイントに行くかが読めなければ釣れない。その為水面を流れるいろんな種類のゴミを観察し、水面に浮き風の影響を受ける物と、水面下で風の影響を受けないと物を見つけ、それぞれの動きでラインとフライの流れを予測する。コイの居るポイントからさかのぼって自分の立ち位置及び、フライとラインの落とし場所を決める。
流れが読めたら、コイのポイントの上流から流す。流れに載ればフライがコイの鼻先を通る場所に立つ。コイはあまり流れの速いところを好まないので、立ち込みもさほど苦にならない。深くても膝上で十分。ロングキャストもほとんど必要ない。とりあえずラインを振り出し、流れに平行にキャステトする。距離は遠くなくて良い。すぐ前にもコイはいるから5mも出せば十分。後は流れがラインを引っ張ってくれるので、ラインをスムーズに送り出すだけで良い。フライにドラッグを掛けないようにロッドを流れに向け、竿先を下げてガイドの抵抗を極力抑えてラインを送り出す。ロッドを60 - 90度位立ててフライが微かに動く位の余裕を持たせると良い。ラインが弛みすぎているとコイがフライに出たときの合わせが遅れるのでラインの張り具合のチェックはまめに行う事。また、ラインが張りすぎていると途中の流れの変化や竿の微かな動きがフライにドラッグとなって現れる。トップガイドからラインが垂直に垂れていることがラインにテンションが掛かっていない証拠です。
立ち込んだ場所に余裕があれば、ロッドを体の正面に構えるより、横に構えてラインの流れに合わせて竿先を移動させる方がガイドの抵抗を無くしてフライを自然に流すことが出来る。ラインの送り出しも一瞬で済む。
●速い流れの場合、ラインを素早く送り出すことが必要だから、竿先の移動幅を可能な限り大きく取れる体の横を移動させるのが正解。正面ではラインが流れに引かれる力に頼ることになるし、ラインは常にガイドの抵抗を受けている。また、竿先の弛みを確認しにくい。手元のラインはリールから多めに出しておいてロッドを引いたときにスムースに出るようにする(流し終わってラインを手繰ったとき、リールに巻かないで足元に流しておくと次がスムースに流せる)。ある程度距離が出ると、流れの力でラインは自然に出ていくようになるので大きなあおりは必要なくなるが、手元のラインを手繰っておいて抵抗無く出ていくようにすることが肝心です。
●流れが遅くてラインを引き出す力が弱い場合、ラインは出にくい事が多い。そんなときもロッドは体の横に位置させた方がいい。出にくいラインを出すときは竿先のラインを水中に沈め、ロッドを素早く後に引く。水中にあるラインの抵抗で意外に簡単に出て行きますよ。ロッドを横に位置させると、合わせにも素早く対応できるし、ラインの余裕も見易い。ラインの移動に合わせて竿先を下流に移動し、余裕が無くなったら左手に掴んだラインをフリーにして、ロッドを上流に素早く引く。手元のラインは必要な量フリーになっていれば、正面の場合よりもフライにテンションを掛けないでラインを出すことが出来る。ロッドの移動幅を大きくすると引く回数が少なくなる。
真下に流す時はラインが完全に流れに載っているので問題はないが、目的のポイントに立てなかった時は速さの違う流れを横切って斜めにキャスティングすることになる。この場合、手前の遅い流れがラインの抵抗になり、速い流れに載っているフライにドラッグが掛かってしまう。シューティングラインは抵抗の大きいラインの太い部分は10yd。この先端の太い部分が後ろの抵抗の小さい細いレベルライン(ウエイトフォワードより細い)を引っ張ってくれるので、フライの流れがよりスムースになる。だからシューティングが良い。レベルラインを2本巻くと60yd。フライさえ確認できれば70yd先にいるコイにも対応できるのです。
1.流芯の流れの速い場所
2.流芯横の少し流れの緩い場所
3.速い流れがすぐ横に在るがそこはほとんど流れのない場所
4.岸寄りの流れの緩い場所
5.堰堤やワンドの溜まりで流れのほとんどない場所
6.風や流れでゴミが集まってくる流れの緩い場所
1流芯の流れの速い場所
ここは流れが速すぎるので横からのキャストはすぐフライにドラッグが掛かる。ドラッグを掛けないように釣るには、自分の流したいポイントの[川上の流れの中に立ち込む]しかないがそこも流れが速いので、ドラッグを掛けないようにラインを送り出すにもかなり手早くやらなければいけないので、送り出しの上手くできない人には釣り難い。ラインから引き波が出ているのを確認出来れば流れより遅れているのが判るはずです。
2流芯横の少し流れの緩い場所
ここはいちばん基本的なポイントでだれでも最初に狙うところだと思う。このポイントを岸から狙う時、一番気を付けなければいけないのは、岸寄りと沖で流れの速さが違うことだ。岸寄りのラインの動きは遅く沖のラインは速い。フライを流れに載せて流したいのに、岸よりのラインが抵抗になってドラッグが掛かる。フライはだんだん岸に近づいてくる。コイから見れば餌が流れを横に移動して行く。これでは食いつくはずがない。
解決法で一番良いのは、筋をしっかり読み[流れの筋に立ち込む]ことで、ポイントの上流からフライに抵抗がかからないようにラインを流れに載せて送り出す。立ち込むとき注意しなければいけないことがある。場所によって川床から濁りが出ることがあるので、コイの居るポイントに濁り水が行かないように川底の状態を確認し、筋をはずすことも必要。コイは濁りを嫌う。
何らかの理由で筋に立ち込めない時は[ラインを送り出す]。キャスティング後ラインを沖に向かって余分に振り出し、手元のラインが動き出したら順次送り出してメンディングする。ラインの先端にドラッグが掛かるのを極力抑える。振り出したラインをそのままにしてコイが食いつくのを待っていたのでは、フライにドラッグが掛かり流れを横切るように流れるので釣れない。
3速い流れがすぐ横に在るがそこはほとんど流れのない場所
ここの基本は[上流から流れに載せて]コイの目の前をフライが通るように流すか、川下から横の速い流れのコイの上流にキャスティングする。決してコイの居るポイントに直接キャスティングしてはいけない。コイが驚いて逃げるから。またコイの後ろにフライを落としてもダメ。コイは前しか見ていない。
4岸寄りの流れの緩い場所
こんなポイントは[上流からコイのポイントを通るよう]に流す。流れが遅いので流れるのを待ちきれずコイのすぐ前に落としたいところだが、すぐ近くに落とすと驚いて逃げる。2m以上離れた場所に落とし我慢強くフライがポイントに到着するのを待つ。
5堰堤やワンドの溜まりで流れのほとんどない場所
ここで必要なのは、コイの進む方向を読み[コイの通り道に落とす]。4の場合と同じく近すぎると逃げるので、2m以上離れたところを予測する。コイが向きを変えたら、またその先を読みキャスティングする。少しでも流れや風があれば風向きと強さ、自分の立ち位置と水の流れ、コイの動きを予測してキャスティングする。上手くポイントを予測しても、途中のラインが流れや風に引っ張られるとドラッグが掛かるのであらゆる状況を判断しすぐ修正する。ピックアップは静かにラインを引きポイントから離れたところで行う。コイの近くでピックアップすると驚いて逃げる事もある。
6風や流れでゴミが集まってくる流れの緩い場所
フライに[ゴミと同じ動き]をさせる。ゴミの中でフライだけ別な動きをすると、食いつかない。[ゴミの中の旨そうな餌]を演出する。ゴミの上に乗らないように、ゴミの間の空き地に上手くキャスティングする。またフライにゴミなどが絡むと決して食いつかない。ゴミの中のコイは釣りにくいが上手くやると簡単に釣れる。ゴミが密集していて隙間がないときは、ゴミの外側にキャストする。ゴミに向かって移動して来たコイや、ゴミの端まで来てUターンするコイを待つ。とにかくゴミが彼等の姿を隠してくれるので(こちらの姿も隠してくれる)、餌のことだけに集中し周りに対する警戒心が薄れている。今までのポイントで一番簡単に釣れる場所です。
自分がキャスト出来る範囲にコイのライズを見つけた場合、プレゼンテーションのポイントを間違えると釣れる可能性が極端に低くなる。[コイの行動]を理解し先回りするのです。
[コイの行動]とは、
1:ほとんどの生き物のと同様に、前方は良く見えるが後ろは見えない(見ない)
2:コイは移動しながら餌を探している(移動速度は波紋と同じくらいの速度)
3:餌を捕ると、その場所はもう見向きもしない(多くの餌が在る場合は別です)
4:餌ではないと判断すると、同じ物には二度と興味を示さない(憶えている)
5:餌を見つけてから近付いて吸い込むまでに結構時間が掛かる(素早くない)
6:透明度にもよるが見える範囲は約2-3m(濁りが入ると範囲は狭くなる)
7:よほど空腹でないと急反転はしない(動きはゆったりしている)
8:水と別な動きをする物は、餌と認識しない(特にスレて来ると)
9:異物の動きには敏感で、驚いて逃げる(フライもラインも異物になる)
10:底近くを回遊しているコイは水面に興味がない(喰い気が無い)
これらの条件を考えると水面に現れたライズリングの真ん中にキャストしてもコイは釣れない事が理解出来ると思う。
つまりコイはそこにはもう居ないし、居ても興味を示さない、それどころか時には驚いて移動してしまうのです。
こんなコイにフライを[餌]として認識させ、食いつかせるには:
●ライズリングの外側に:コイがライズしたら、その進行方向を確認し(突然でライズが見えなかった場合は、コイの沈んだ跡の波紋の中心から水が[モワッ]と動いている方が後ろ−−それも判らなければ勘でどちらか選ぶ)ライズポイントから2−3m位離れた波紋の外側に、素早くキャストする。キャストポイントはライズポイントの左右か手前に限られる。ライズポイントを横切って奧にキャストすると、まだ直下にいる筈のコイを脅すことになる。
●まだ出て居ないところへ:ライズポイントの近くに数尾のコイが居る事を確認している場合はライズポイントの中心を外し、近くでまだライズしていない所を選んでキャストする。
●近くなら待つ:フライから3m以内のライズなら、そのまま波紋が通過するまでフライを動かさないで、ドキドキしながらコイがフライを見つけてくれるのを待つ。
●進行方向ならそのまま:距離が離れていても、フライがコイの進行方向に在ればそのまま待てばいい(待ち切れなければ近くにキャストしてもいいが、近過ぎないように)。
●簡単に諦めない:コイはフライを見つけてから吸い込むまで時間が掛かるので、キャストしたのだが反応が無いからと言ってすぐ諦めたりしないで、コイが近くにいる可能性がある限り辛抱強く待つ。
●ドラッグには注意を:フライに僅かでもドラッグが掛かると、[見切られる]可能性が高くなる。特にポイントとの間に流れがある場合、ドラッグが掛かりやすいのでメンディングを確実に行いナチュラル・ドリフトに努力する。
●集団行動をする:コイは数尾の群で回遊していることが多く、先頭の1尾が無視すると後続のコイも同じ行動をとる。逆に先頭が興味を示すと、後続のコイも興味を示す。コイが見える場合はその動きを確認する。
●別物を演出:見切られた場合はフライを少し移動して別の餌を演出するか、少し離れた場所(進行方向)にキャストしないと、そのフライには決してライズしない。
●底に近いと喰い気が無い:底近くを回遊しているコイは、水面に興味を示さないことが多い。移動の速度が遅かったり速かったりする場合は特にその傾向が強い。波紋と同じ位の速度の場合は、興味を示すこともあるが…。
食い気のあるコイのライズを見つけても、コイの後ろや目の前にキャストしたら、無視されるか嫌われるだけなので、コイの見ていない場所か潜っているうちにフライを静かに落としコイが見つけてくれるのを辛抱強く待つのです。
すぐ近くに食い気のあるコイを見つけた場合、コイの動きに注意する以上に自分の動きにも注意する。急にロッドを動かしたり、ラインを引き出すために左手が動いただけでも驚いて逃げ出してしまう。まるでリールの音が聞こえたかのように。
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