フライフィッシングには、水面に浮かせるドライと水中に沈めるシンキングの2種類に大きく分けられる。沈めて釣る釣りだと、魚がフライに食いつき、糸を引っ張って初めてアタリを確認できる。ラインの途中に目印を付けたルースニングもあるが、自分の作ったフライに魚が狂ったように食いつく姿が見られないので好きではない。その為ドライに絞り込んで フライを紹介する。
コイが水面に頭を半分突きだし、大きな口を開けて餌をとっているのを見ているとうれしくなるのは、釣りをしているからなのだろうか。河原に遊びに来た子ども達もこの景色を喜んでいる。そして餌を与える。自分たちのおやつのお菓子を。コイもそれを待っている。お菓子を針に付ければ簡単にコイが釣れそうだがそれはフライじゃない。あんなお菓子に似たフライで釣れば、釣れそうだ。
ジャイアントコーンでもカッパエビセンでも良いのだが、都会の河川の水面に一番多く流れているのは、釣りの餌にも使われているパンではないだろうか。白くて柔らかく、水面ギリギリに浮いて流れるパンが、コイの食い気を誘わないわけがない。パンに似せるためには、何が必要か?パンを小さく切ってコップに入れて観察すると、水に入れる前より一回り大きくなり透明感が増す。浮き方は、水面ギリギリで、水面にはほとんど出ないが浮いている。堅さは、とても柔らかく崩れやすい。コイはこれを周りの水と一緒に吸い込むのです。
パンに似せたフライのマテリアルには何を使えばいいのか?白くて柔らかくて手には入りやすいものは。
●マラブー:フライ売場で簡単に買える。色数も多い。毛足の長い方が良い。手間が掛かるのが難点。[YARN]が発売される前はメインのマテリアルでした。
●ヤーン:フライ売場にある素材で[EGG YARN] と[GLOBUGS YARN]が在り色数も多い。扱いが簡単。
●シルク:フライ売り場では売っていない。手芸素材を売っているのを見つけた。シルクがヤーンと同じように撚ってない状態で売られている。表面の光沢がきれいで水中での透明感がなく存在感がすばらしい。白い[A Slik]と薄茶の[B Silk]が東急ハンズの毛糸売場で売られている。
●スポンジ:植物パルプで作られた浴槽用のスポンジでパンと全く同じに見える物がある。試しに使ったが素材の強度が弱く耐久性に問題があったが、耐久性のあるフローターを使うことでフライに仕上げることが出来た。しかし、あまりにもパンそっくりなのでちょっと抵抗を感じるときも(笑)。普通のウレタン素材でも釣れることは確認している。コイの反応はいいがスポンジなので素材内部の空気が抜けると針の重さで沈んでしまう。強制的に浮かせるためにフラットタイプのフローターに直接接着するか、フローターを内部に仕込む。
●フェルト:インターネットで知り合った釣り仲間の井手さんが教えてくれた新しい素材。ウェーダーの底に使う化繊の物や手芸用のウール素材の物などで厚みもいろいろある。厚味があるので四角に切ったパンそっくりになる。浮力がないので、フラットタイプのフローターに直接接着することでフライとしての浮力が得られる。
○他にも動物の毛などが浮く素材として存在するが、繊維が太くて硬いので水中でのまとまり感が薄い。繊維は細い方が水中でまとまりやすい。
以上が、現在コイ用フライとしてお奨めできる素材です。
パンは水面に浮いて流れる。対象が渓流魚の場合、フライを浮かせる事は簡単だ。フックは小さく軽いのでマテリアルの表面張力で水面に浮いてくれる。コイを釣り始めた頃は、この方法でフライを浮かせていたけれど、マテリアルの表面張力がなくなると簡単に沈む。また、浮力を助けるために細いフックを使ったら、コイの引きに耐えられず伸びてしまった。フックをヘビーワイヤーなものにすると、重くてマテリアルの表面張力だけで浮かせることが難しくなる。マテリアルを多く付けたりフロータントのシリコン等で無理矢理浮かせると、風に流されドラッグが掛かり食いが極端に落ちる。フライの大部分は水面下にあり水面ギリギリに浮かないと風の影響を受ける。今までのドライのフライの作り方ではなく、浮かせるための物を付けてやらないとコイのフライは出来ない。確実に浮いて水面に出る部分の量の調整も出来るような物。浮材で無理矢理浮かせることは、フライの世界には存在しないのか浮かせるための素材はフライ売場には売っていなかった。色々浮きそうな物を試したが、今は建築資材のシーリング材を使っている。旭化成が作っている[サンテック] という素材で作られた[小丸棒](写真右)と言うもので直径6mm, 8mm, 10mm...の円柱状のもので1mあたり数十円という価格もうれしい。これをフックに取り付けて必要な長さに切る。浮かせるためのものなので[フローター]と呼んでいる。[小丸棒]のフローターは長さと太さで浮き具合が調整できるので便利です。
[小丸棒]は浮かせるための素材としては申し分ないのだが一つだけ欠点がある。それは接着と着色を受け付けない事だ(上記の[Chubby-Silk]のトップの着色もずいぶん苦労した)。ボディマテリアルとフローターを同色にすれば、フライ全体を一色にして一体化を計ることが出来るのだが[小丸棒]ではそれが出来ない。そこで、マス用のフライに開発したオリジナルフローターを作るテクニックで、コイ用の太いフローターを作ってみた。マスの場合は[鋭い歯]があるので強度優先の素材を使ったのだがコイには[歯]が無いので、マス用よりも色の白い素材が使える。素材的に浮力は十分あるし、接着が可能で色も好きな色に出来る(油性マーカーで着色)。自作なので太さも自由に作れる。製作工程が原材から打ち抜きなので長い物は作れないが65mmあるのでかなり効率的に使えそうだ。
[オリジナルフローター[R]の作り方]
これまで丸形のフローターを使っていたが新しく浮力のある素材を見つけ、今までの発想では全く考えつかなかったフローターが出来上がった。素材は[EVA]、まるで[レンガ]。この塊を切り刻んでいくうちに思いついたのがフラットタイプのフローター(Original Floater [F])。ちょうど食パンのリアルイミテーションフライ[Shock-pan]の開発が終わったところで、この新しいフローターを使って[Shock-pan:Mimi]が出来上がった。この新しいフラットタイプのフローターを[Chubby]タイプに使ってみたら、今まで長い間悩んでいた[ボディマテリアルとフローターとの一体化]の問題が一気に解決。全体がコンパクトで強度にも全く問題ない新パターン[Chubby-Flat]が出来上がった。色の組み合わせも色々出来そうだ。
[オリジナルフローター[F]の作り方]
コイが水面を流れるフライを見つけ食いに出て来る大きさは、水の透明度と食い気に関係している。基本の大きさは、マテリアル全体の大きさが1.5cm 。透明度が低くなったり、流れの速いところでは、少し大きめの 2cm 位が良い。また水温の上がる夏場やハイプレッシャーでスレているコイには全体を小さくすることで見切りを少なくする事が出来ます。
逆に川幅が広く水深も深くゆったり流れているところでは、小さいフライは餌と認識しないようで、大きめのフライの方が効果的です。
マテリアルの色は、パンに似せたのだから白で十分だと思ってはいけない。同じ色のフライばかりを使っていると、コイは[餌ではない]ばかりでなく[怖い物]と認識するようになる。 フライの直前までは食い気十分に追ってくるが、餌でないことを見破って慌てて逃げることが多くなる。これを[見切る]といっているが、見切られないためにマテリアルの色や大きさ、素材等、人と違った物を使うことが必要になる。色々試して欲しい。
フライのフックは一般的にドライ用とシンキング用と分けられているが、コイ用に使えるフックは、多くの条件をクリアーしなければいけないから、ドライ用にはこだわらないでコイの力に耐えられるかどうかにこだわって欲しい。
まず、コイの力に耐えられるヘビーワイヤーであること。特に下顎には固い骨があり、ここにフッキングするとフックが深く刺さらないので、針先に力がかかり、ワイヤーが細いとフックは伸びるし、焼きが硬いと折れる。
次にふところが広いこと。ふところが狭いとフックがコイの口の皮を薄く刺すだけなので掛かりが浅くなり口切れがバラシの原因になる。ショートシャンクでふところの広いものを選ぶといい。
大きさは針の形に大きな関係がある。フックが小さくなると全体が小さくなり、ふところの浅いフックを使っているのと同じで掛かりが浅くなる。コイのためのフックは、#8 - #10 位が適しているが、ふところが広いフックであれば少し小さめでも大丈夫なので針の形で大きさを選ぶといい。チヌ針は1号までは大丈夫なことを確認している。
コイのフライに適したフックは右の絵のように色々あるが、現在一番気に入っているものは、フライ売場ではなく海釣りの売り場で売られている[チヌ/グレ針]で、アイが付いている。ワイヤーが太く、シャンクが短く、ヒネリとネムリが少し入っている。色もシルバー、ブラック、ゴールドと豊富で、マテリアルの色に合わせることもできる。
● フライ全体は水中に沈み、確認のためのフローターの一部が水面に出るようにする(上の写真参照)。
● フックは折れたり伸びたりしない強度の高いものを選ぶ。
● マテリアルは全体ではっきりした形になるように多めに付ける。
● ふところは出来るだけ広くフックが刺さりやすくする。
● カエシは必ずつぶしておく。ラインを切らても、口から外れて浮いてくるので回収できる事もある。
● 大きさと色のバリエーションを作っておく。
● フライの位置を見易くするためのマーキングは各自好みの色で。
● カエシは必ず潰すこと。糸を切られたときのコイことを考えましょう
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